糖尿病患者さんにおける動脈硬化検査の必要性
動脈硬化は生命に関わる大血管障害の原因となります。この記事では、糖尿病患者さんにおける動脈硬化検査の必要性に関して解説します。
本日のポイント
- 動脈硬化とは、コレステロールが血管壁に沈着し、血管の壁が硬くなって柔軟性を失っている状態。
- 動脈硬化の進展は、心筋梗塞、脳梗塞などの大血管障害 (動脈硬化症) の原因となる。
- 糖尿病患者さんは、糖尿病のない人に比べて3~5倍程度、大血管障害発症の危険度が高い。
- 動脈硬化は自覚症状なしに進行するため、検査による早期発見が大血管障害予防の鍵になる。
- 動脈硬化の検査には、CAVI検査、ABI検査、頸動脈超音波検査などがある。
動脈硬化とは?
糖尿病患者さんにおける重篤な合併症として、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患 (足の動脈硬化) などの大血管障害 (動脈硬化性疾患) が挙げられます。
大血管障害は、コレステロールが血管壁に沈着し、血管壁が硬くなって柔軟性を失ってしまう動脈硬化の進展が主な原因です。
過去の様々な調査の結果より、糖尿病があるというだけで、糖尿病のない人に比べて3~5倍程度、大血管障害発症の危険度が高いと言われています。
高血圧や脂質異常症 (高脂血症)、喫煙など他の危険因子もあれば、さらに危険度が上がっていきます。
動脈硬化は自覚症状なしに進行するため、検査による早期発見が大血管障害予防の鍵となります。
動脈硬化の検査
非侵襲的で簡便な動脈硬化の評価方法には、以下の検査があります。
・心臓足首血管指数 (CAVI検査)
CAVI検査は、心臓 (Cardio) から足首 (Ankle) までの動脈 (Vascular) の硬さの指標 (Index) の略で、普段の血圧に関係なく、動脈の硬さなどを数値で評価することができます。
動脈硬化が進み、動脈壁の弾力性が失われた硬い血管では拍動は早く伝わります。
したがって、CAVIの数字が大きいほど動脈硬化が進行していることを意味します。
・足関節上腕血圧比 (ABI)
足首と上腕の血圧を測定し、その比率 (足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧) がABIになります。
動脈硬化が進んでいない場合、両腕と両足の血圧を同時に測定すると、足首のほうがやや高い値を示します。
しかし動脈硬化を原因とした下肢動脈の狭窄や閉塞があると足首の血圧は低下し、ABIも低下します。
したがって、ABIは下肢血流障害の程度を表します。
※ CAVI、ABIは同時に測定することが出来ます。ベッドの上で仰向けになり、心電図の電極、心音マイク、両腕と両足首に血圧計の圧迫帯を装着し、検査の所要時間は5分程度で終了します。性別や年齢が同じ健康な人の平均値と比較することで「血管年齢」も分かります。
・頚動脈超音波検査
首にプローベ (超音波発振機) を当てて、頸動脈の狭窄や血管の壁 (内膜) の肥厚がないかを観察します。
頸動脈の動脈硬化が進んでいるほど、他の大血管の動脈硬化も進んでいると考えられ、大血管障害の危険度を推測することができます。
検査時間は30分程度かかります。
その他、動脈硬化性疾患の検査として、心筋梗塞などの所見を確認する心電図検査、心拡大などが評価できる胸部レントゲン検査、心臓の動きなどをみる心臓超音波検査、造影剤を注入して心臓の動脈の状態をみる冠動脈CT検査などがあります。
動脈硬化の予防と治療
動脈硬化の主な原因として挙げられるのは、糖尿病や脂質異常症、高血圧、肥満、喫煙、アルコールの過剰摂取などです。
生活習慣が深く関わっていますので、動脈硬化の予防と治療には、日頃の生活を見直すことが必須です。
具体的には、①摂取カロリー制限や脂質の量・種類に対する適切な制限をする、②食物繊維を積極的に摂取する、③減塩をする、④有酸素運動を適度に行う、⑤禁煙をする、⑥節酒をする、⑦体重を適正にする、ことが重要になります。
定期的に動脈硬化の程度を把握し、危険因子を積極的に改善していくことが、糖尿病患者さんにおける予後の改善に繋がります。
以上、糖尿病患者さんにおける動脈硬化検査の必要性、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。