糖尿病と便秘の関係|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

〒169-0075東京都新宿区高田馬場1-1-1
メトロシティ西早稲田3F
03-6709-6721
WEB予約
ヘッダー画像

ブログ

糖尿病と便秘の関係|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

糖尿病と便秘の関係

Pocket

この記事では、糖尿病患者さんが、なぜ便秘になりやすいか、糖尿病と便秘の関係を、解消法も含めて解説します。

この記事は、ノボケアAll in No.15 (2023年12月発行) で、ブログ管理人が書いた内容になります。

本日のポイント

  • 糖尿病患者さんは、糖尿病のない人と比較して、便秘の有病率は高い。
  • 主な原因として、糖尿病性神経障害、薬剤性、高血糖、食事制限による摂食量の減少、ストレスなどの心理的因子などが挙げられる。
  • 食事内容の見直し (食物繊維の摂取を増やす、水をこまめに飲む) や適度な運動など生活習慣改善が、便秘解消の基本となる。
  • 腸内容の移動を促進させる刺激性下剤は、長期的に使用することにより、腸の蠕動運動を低下させ、便秘をさらに悪化させる。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: shopping-4974313_1280.jpg

便秘に対する糖尿病の影響

糖尿病患者さんは、糖尿病のない人と比較して、さまざまな消化器症状を有することが知られており、そのなかでも便秘の有病率は高いと報告されています。主な原因として、次の4つが挙げられます。

・ 糖尿病性神経障害                                       糖尿病性神経障害は、糖尿病の合併症のひとつであり、下肢のしびれや痛み、感覚が鈍くなるなどの症状を引き起こす感覚・運動神経障害と、起立性低血圧や発汗異常など多彩な症状を呈する自律神経障害に分けられます。そのなかでも、自律神経は排便をコントロールする神経であるため、自律神経障害が便秘の主な原因となります。

・ 薬剤性                                           糖尿病治療薬の中には、その作用機序によって、便秘に影響を与える薬剤があります。

① α‐グルコシダーゼ阻害薬

腸における糖質の吸収を遅らせて食後血糖値の上昇を抑える薬ですが、副作用として、お腹が張る、放屁、下痢、便秘などがあります。                                           

② GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬

いずれも血糖値が上昇するとインクレチンという消化管ホルモンの濃度を上げて、インスリンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑える薬です。消化管の動きを抑える働きがあるため、便秘を生じることがあります。

③ SGLT2阻害薬

血液中の糖を尿と一緒に排出して血糖値を下げる薬です。尿量が増えるため脱水になりやすく、水分を十分に摂らない方は便秘になることがあります。                                           

※ 糖尿病の治療薬以外でも便秘になりやすい薬はあります。

・ 高血糖                                                           高血糖状態は、胃の動きを抑えて食物の排出を遅らせます。また脱水をもたらすため、便秘の原因になります。血糖コントロールを改善することで、便秘症状は改善する可能性があります。

・ その他の要因                                                      食事制限による摂食量の減少やストレスなどの心理的な因子などが便秘に関与しています。

便秘の解消法

食事内容の見直しや適度な運動など、生活習慣改善が便秘解消の基本となります。

・ 食事内容の見直しのポイント                                                    食事制限をしている方は、特に食物繊維が不足しがちになるので注意が必要です。食物繊維の摂取を増やすには、主食では白米を玄米に変えたり、胚芽パンやライ麦パン、オートミールを利用するのも良いでしょう。野菜は生野菜で摂るだけでなく、蒸したり、茹でたりして、かさを減らすと食べる量を増やすことができます。その他、きのこや海藻、豆類も積極的に摂るようにしましょう。また、水分不足も便秘の原因なりますので、水をこまめに飲む習慣をつけるようにしましょう。

・ 適度な運動のすすめ                                                  激しい運動より、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。座ったままでも良いので、腰をねじる運動も、腸を刺激して蠕動運動を助けます。                                         ※ 糖尿病合併症の有無によって、運動療法ができない方もいますので、主治医に相談してください。

・ 腹部のマッサージ                                                      便の進行を助けるように、お腹に手をあて、時計回りにゆっくりマッサージをします。5~10分程度を、毎日寝る前に続けると、便秘の解消が期待できます。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 24149600-795x1024.jpg

・ 器質性便秘の確認                                                                      便秘の原因として、大腸癌やクローン病などにより、大腸が狭くなることで排便が困難になっている場合もあります。早期発見、早期治療のためにも、定期的に大腸カメラなどの検査を行い、体調を把握することが大切です。

 

便秘薬の服用について

なかなか便秘が解消されない場合に、便秘薬を処方されることがありますが、注意点があります。

腸の蠕動運動を亢進させ、腸内容の移動を促進させる刺激性下剤は、効果が出やすく多用されがちですが、長期的に使用することにより、腸の蠕動運動を低下させ、便秘をさらに悪化させます。酸化マグネシウムは、非刺激性の便秘薬であり、便秘の第一選択薬ですが、腎機能が低下している方では、高用量や、長期的に使用すると高マグネシウム血症になることがあるので注意が必要です。

最近、胆汁酸トランスポーター阻害薬という腸内の水分分泌と腸の動きを活発にする便秘薬が使用可能となりました。

便秘があっても、安易に便秘薬に頼らずに、自然に排便できるようにすることが大切です。         ご自身の判断で市販の便秘薬は使用せず、まずは主治医に相談してください。              糖尿病治療と便秘治療には共通点も多いので、まずは食事と運動、そして血糖管理をしっかりしてみましょう。

 

以上、糖尿病と便秘の関係、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。                                            

参考資料

眞部 紀明ほか:日本内科学会雑誌109(2), 254-259, 2020

高野 正太:日本大腸肛門病会誌72, 621-627. 2019