「やせ薬」と言われるGLP-1受容体作動薬のリスク|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

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「やせ薬」と言われるGLP-1受容体作動薬のリスク|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

「やせ薬」と言われるGLP-1受容体作動薬のリスク

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この記事では、GLP-1受容体作動薬により起こり得る副作用と注意点に関して解説します。

本日のポイント

  • GLP-1受容体作動薬は、食欲を抑制することで体重減少する効果が期待できる。
  • 副作用として、胃の不快感や吐き気、下痢、便秘などの消化器症状が起こる。
  • 胆嚢炎、膵炎、腸閉塞(腸の一部が詰まってしまう)、胃不全麻痺などの重篤な副作用も報告されている。
  • 日本人における体重減少目的で使用された場合の安全性は、確認されていない。
  • 副作用のリスクを考慮して、注意深く観察しながら使用する必要がある。

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GLP-1受容体作動薬とは?

GLP-1は、食事を摂取すると小腸から分泌されるホルモンで、すい臓からインスリン (血糖値を下げるホルモン) を出すように働きかけます。

GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1を補う薬剤であり、血糖値を下げるだけでなく食欲を抑制することで体重減少する効果も期待できることから、2型糖尿病患者さんの治療薬として広く用いられています。

GLP-1受容体作動薬は、日本国内において2023年時点では、2型糖尿病患者さんのみに保険適用可能な治療になりますが、自費診療やネット販売などを利用して、美容やダイエットなど体重減少を目的に「やせ薬」として使う人が増えています。

GLP-1受容体作動薬により起こり得る副作用について

GLP-1受容体作動薬を使用するにあたって注意すべきことは、副作用として、胃の不快感や吐き気、下痢、便秘などの消化器症状が起こることがあり、胆嚢炎、膵炎、腸閉塞(腸の一部が詰まってしまう)、胃不全麻痺などの重篤な副作用も報告されている点を理解する必要があります。

食事がおいしいと感じず栄養不足になったり、低血糖から意識を失い、転倒や事故を招く可能性もあります。

体重減少を目的としてGLP-1受容体作動薬を使用した研究結果

ここで、体重減少を目的としてGLP-1受容体作動薬を使用した際の、消化器疾患の発現を調査した研究結果をご紹介します (JAMA誌オンライン版2023年10月5日号に掲載)。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMohit Sodhi氏らの研究グループが、米国の大規模保険請求データベースを用いて、GLP-1受容体作動薬を使用した肥満の患者さん4757名における胆道系疾患(胆嚢炎、胆石症、胆管結石症を含む)、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺の発現を、ブプロピオン・ナルトレキソン複方制剤 (日本ではまだ承認されていない肥満治療薬) を使用した肥満の患者さん654名と比較検討しました。

この研究のポイントは、糖尿病患者さんが対象者に入っていないことです。

結果です。

GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドを使用した613名における各消化器疾患の罹患率は、以下の通りです。

胆道系疾患:11.7 (1000人年当り)

・膵炎:4.6 (1000人年当り)

・腸閉塞:0 

・胃不全麻痺:9.1 (1000人年当り)

※ 「1000人年当り」とは、1,000人が1年間生きた場合に、発生する事象の数を表します。

GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドを使用した4144名における各消化器疾患の罹患率は、以下の通りです。

・胆道系疾患:18.6 (1000人年当り)

・膵炎:7.9 (1000人年当り)

・腸閉塞:8.1 (1000人年当り) 

・胃不全麻痺:7.3 (1000人年当り)

※ 「1000人年当り」とは、1,000人が1年間生きた場合に、発生する事象の数を表します。

そして、GLP-1受容体作動薬の使用は、ブプロピオン・ナルトレキソン複方制剤の使用 (対照群) と比較して、胆道系疾患の有意なリスク増加は認められませんでしたが、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクを有意に増加させました。

この研究結果から、GLP-1受容体作動薬の投与による膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺などの重篤な副作用の頻度はそこまで高くはないですが、そのリスクを考慮して、注意深く観察しながら使用する必要があります。

GLP-1受容体作動薬を体重減少目的で使用する際の注意点

ご紹介した研究結果は、海外の報告であり、日本人とは体格や体質などが異なりますので、副作用の頻度も異なります。

日本人における体重減少目的で使用された場合の安全性は、確認されていません。

また適正体重を大きく下回る「やせ過ぎ」になると、脱水、免疫力低下、骨粗鬆症、月経不順など様々な健康障害が懸念されますので、自己判断で過剰に使うのは非常に危険です。

GLP-1受容体作動薬は、その効果を安全に発現させるためにも、正しい使用方法を守っていただくよう、お願いしたいです。

 

以上、「やせ薬」と言われるGLP-1受容体作動薬のリスク、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。