長引く咳で疑われる百日咳とは?
- 2025年4月16日
- 感染症
百日咳は、いまだ流行が発生する急性の気道感染症です。長引く咳が特徴的で、感染力も強く、治療まで2~3ヶ月が必要になります。この記事では、百日咳に関する特徴を、検査、治療も含めて解説します。
本日のポイント
- 百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作を特徴とした、百日咳菌(Bordetella pertussis)やパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)の感染によって引き起こされる急性の気道感染症。
- 感染経路は、鼻やのどなどの気道からの分泌物による飛沫感染や、感染者との接触による接触感染で、非常に感染力が強い。
- 症状の経過は、カタル期、痙咳期、回復期の3期に分類され、治療まで約2~3カ月が必要。
- 検査は、培養検査、血清抗体検査、PCR検査、百日咳菌抗原キット がある。
- 治療は、マクロライド系抗菌薬での抗生剤治療を行う。
百日咳とは?
百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作を特徴とした、百日咳菌(Bordetella pertussis)やパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)の感染によって引き起こされる急性の気道感染症です。
乳児期の早い時期から感染する可能性があり、重症化すると、最悪の場合、死に至る場合もあります。
わが国も含めて世界各国で、DPT三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)あるいはDPT-IPV四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)の接種が実施されたことにより、百日咳の発生数を減らすことに成功しましたが、ワクチン未接種の方や、接種後から年数が経ってしまい免疫力が低下してしまった方での発症は世界各国で認められ、いまだいずれの年代でも発症しており、多くの流行が発生しています。
感染経路は、鼻やのどなどの気道からの分泌物による飛沫感染や、感染者との接触による接触感染になります。
インフルエンザは1人の人間から1~2人の人間に感染するところ、百日咳は16人以上に感染する可能性があり、非常に感染力が強いです。
症状の経過は、以下の3期に分類され、治療まで約2~3カ月が必要とされています。
① カタル期(約2週間):初期は普通のかぜ症状を認め、次第に咳の回数が増えていきます。
② 痙咳期 (約2~3週間):特徴となる発作性でけいれん性の咳が出現します。夜間の発作が多く、微熱が続くこともあります。この時期の合併症として、肺炎や脳症などがあり、特に乳児では注意が必要になります。
③ 回復期(約2~3週間):激しい発作は次第に減っていきますが、忘れた頃に発作性の咳が起こることが長期にわたり持続します。咳がひどいと、肋骨骨折を起こす場合もあります。
百日咳の検査
百日咳の診断を、症状だけで判断するのは難しく、百日咳の検査には主に以下の方法があります。
① 培養検査
培養検査とは、鼻の穴から採取した菌を培養する検査で、陽性であれば診断は確定します。
しかし結果が出るのに、7日間程度時間を有するため、迅速的な診断が必要な場合は向きません。
さらに痙咳期以降は、菌が検出されにくく、また、抗菌薬治療を受けた場合は陰性になる可能性が高いため、あまり実用的な検査ではありません。
② 血清抗体検査
血清抗体検査とは、血液中に含まれる百日咳に対する抗体を調べる検査です。
感染から2週間以上経過した場合に有効の検査で、診断のために急性期と回復期の2回検査する場合もあります。
③ PCR検査
鼻から採取した検体の遺伝子から、診断する検査です。
最も正確で、遺伝子増幅の装置がある医療機関であれば、当日に結果が分かります (なければ翌日以降になります)。
この検査は、症状出現後3週間以内に行うことが重要です。
④ 百日咳菌抗原キット
イムノクロマト法を原理として鼻の穴から拭い液中の百日咳菌由来の抗原を検出します。
判定時間15分で検査結果が出ます。
百日咳菌の感染が疑われてから、できるだけ早期に検査を行う必要があります。
咳の症状が長く続くようであれば、以上の検査をしてみることをおすすめします。
※当院では、百日咳菌抗原キットの検査が可能です。
百日咳の治療
百日咳は、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬での治療を行います。
抗生剤治療は、開始が早ければ早いほど有効である傾向にあります。
また咳が激しくつらい場合には咳止めの薬等の対症療法が行われます。
予防は、マスク手洗いなど基本的な感染対策が有効になります。
以上、長引く咳で疑われる百日咳とは?、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。