新しい肥満症治療薬「ゼップバウンド」に関して|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

〒169-0075東京都新宿区高田馬場1-1-1
メトロシティ西早稲田3F
03-6709-6721
WEB予約 LINE予約
ヘッダー画像

ブログ

新しい肥満症治療薬「ゼップバウンド」に関して|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

新しい肥満症治療薬「ゼップバウンド」に関して

Pocket

2024年2月に肥満症の治療薬であるGLP-1受容体作動薬「ウゴービ」が発売されました。「ウゴービ」が新たな治療の選択肢として期待されているなか、2025年4月に肥満症の新しい治療薬として持続性GIP/GLP1受容体作動薬である「ゼップバウンド」が発売されました。この記事では、「ゼップバウンド」の適応、効果、「ウゴービ」との違い、投与方法などを解説します。

本日のポイント

  • 「ゼップバウンド」の発売によって、保険適用となる肥満症治療の選択肢が増えた。
  • 「マンジャロ」と「ゼップバウンド」の成分は、いずれも「チルゼパチド」という同じ成分であり、その違いは薬価と適応症の違い。
  • 「ゼップバウンド」は、週に1回皮下注射する使い切りの注射剤で、最大投与期間は72週間。
  • 保険適用の対象となる患者さんには、厳しい条件がある。
  • 処方できる施設や医師の要件なども設定されており、総合病院や大学病院での処方が主になるだろう。

肥満症の治療薬として新発売された「ゼップバウンド」とは?

2024年2月に、GLP-1受容体作動薬の注射薬であるセマグルチド製剤:「ウゴービ」が肥満症の治療薬として日本で発売されました。

「ウゴービ」は、GLP-1受容体作動薬の「リベルサス」「オゼンピック」と同じ成分が含まれており、投与することで食欲を抑制し、体重が減少するなどの効果が期待でき、保険適用の新しい肥満治療が誕生したと話題になりました。

そんななか、2025年4月に肥満症を効能・効果とした持続性GIP/GLP1受容体作動薬「ゼップバウンド」(一般名:チルゼパチド)が、日本で新発売されました。

「ゼップバウンド」は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬になります。

2つの作用があることが、GLP-1受容体のみに作用する「ウゴービ」との違いになります

GLP-1受容体への作用は、食事摂取の調節に関与する脳領域(視床下部及び脳幹)へ直接作用して食欲の抑制を引き起こし、さらに腸に作用して蠕動運動の抑制も期待できます

さらにGIP受容体への作用は、脳領域への食欲抑制だけでなく、消化管などに広く分布する肥満細胞に作用して、脂質等の代謝やエネルギー消費を亢進させ、体重減少に働くことも期待できます。

 

同じ持続性GIP/GLP-1受容体作動薬で、2型糖尿病の治療薬として医療保険が適用となる医薬品に「マンジャロ」があります。

「マンジャロ」と「ゼップバウンド」の成分は、いずれも「チルゼパチド」という全く同じ成分であり、その違いは適応症の違いと薬価です。

「マンジャロ」が2型糖尿病、「ゼップバウンド」が肥満症に対する治療薬として承認されています。

薬価に関しては、ゼップバウンドの方がマンジャロよりも高い設定となっています。

 

「ゼップバウンド」の具体的な使用方法

「ゼップバウンド」は、週に1回皮下注射する、使い切りの注射剤になります。

投与を忘れてしまった場合、次回投与までの期間が3日間以上であれば、気づいた時点で直ちに投与します。

次回投与までの期間が3日間未満であれば投与せず、次のあらかじめ決めた曜日に投与します。

 

2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6段間のラインナップがあり、4週間の間隔で増量を検討していきます。

現時点での最大投与期間は72週間となっており、「ウゴービ」の最大投与期間の68週間よりも長く投与することが可能です。

報告されている主な副作用は、以下になります。

  • 消化器症状:吐き気、下痢、便秘、消化不良、腹痛など
  • 低血糖:脱力感、倦怠感、強い空腹感、冷や汗、動悸、ふるえ、頭痛、めまいなど
  • 急性膵炎:嘔吐、激しい上腹部の痛み、背中の痛み、お腹のはりなど
  • 胆のう炎、胆管炎:黄疸 (白目が黄色くなる)、腹痛

 

 

「ゼップバウンド」が保険適用となる条件

現時点における保険適応となる処方要件はかなり厳しく設定されています。

「ゼップバウンド」の保険適用の対象となる患者さんは、以下の通りになります。

 1)高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断がなされ、かつ以下を満たす患者であること。
   ・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する         

   ・BMIが35kg/m2以上

  ※ BMI (Body Mass Index) = 体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)}

肥満に関連する健康障害:耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞・一過性脳虚血発作、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・女性不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候 群・肥満低換気症候群、運動器疾患 (変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節・変形性脊椎症)、肥満関連腎臓病

 2)適切な食事療法・運動療法に係る治療計画を作成し、本剤を投与する施設において当該計画に基づく治療を6ヵ月以上実施しても、十分な効果が得られない患者であること。また、食事療法について、この間に2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けた患者であること。

 3)本剤を投与する施設において合併している高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病に対して薬物療法を含む適切な治療が行われている患者であること。

さらに、肥満症治療に関連する学会(日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本循環器学会)の専門医と栄養指導を行うことができる管理栄養士が常勤している教育研修施設でないと、使用できません。

教育研修施設であるクリニックは少ないため、「ゼップバウンド」の保険診療での処方は総合病院や大学病院で行うことになると考えられます。

「ゼップバウンド」は、新たな肥満治療として期待されていますが、開始するための条件は、なかなか厳しいです。

 

以上、新しい肥満症治療薬「ゼップバウンド」に関して、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。