近年、増加傾向にある 「人食いバクテリア」 とは?
- 2024年11月3日
- 感染症
「人食いバクテリア」 は、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 と呼ばれる感染症です。2023年~2024年にかけて、日本国内における 「人食いバクテリア」 の患者数が過去最高を記録しました。この記事では、この感染症に関する症状や、治療、予防に関して解説します。
本日のポイント
- 近年、増加傾向にある 「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 は、 「人食いバクテリア」 と呼ばれ、症状が急激に進行し、致死率の高い感染症である。
- 感染経路として、のどから体に侵入する飛沫感染と、皮膚から直接体内に侵入する接触感染がある。
- 糖尿病のある方は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症リスクが高く、重症化しやすい。
- 腕や足に、急激に進行する皮膚の赤みや熱感・腫れを認めたり、いつもと様子がおかしい場合は早めに医療機関を受診する。
- 治療として抗生剤治療と外科的処置が必要であり、何より早期に適切な対応をすることが重要。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?
2023年から2024年にかけて、日本国内における 「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 の患者数が過去最高を記録しています。
腕や足の痛み、腫れから症状が始まることがあり、重症化すると壊死性筋膜炎という致死率の高い病気を発症する場合があるので、「人食いバクテリア」 とも呼ばれています。
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 の原因菌は、ほとんどが 「A群溶血性レンサ球菌」 になります。
「A群溶血性レンサ球菌」 は常在菌であり、普段から喉の粘膜や腸、皮膚の表面などに生息している細菌です。
溶血性レンサ球菌は、化膿性レンサ球菌とも呼ばれ、感染すると膿 (うみ) を発生させます。
感染経路として、喉 (のど) から体に侵入する飛沫感染と、皮膚から直接体内に侵入する接触感染があります。
そして感染した部位が、喉 (のど) ならば咽頭炎や扁桃炎に、肺ならば肺炎や膿胸に、関節や骨であれば関節炎や脊椎炎に、皮膚であれば 「とびひ」 やほうかしき炎 (蜂窩織炎) を発症します。
ほうかしき炎が重症化すると、壊死性筋膜炎へと進行します。
軽症であれば、適切な治療をすれば、1日程度で感染力が収まりますが、一部には、症状が急激に進行し、血圧の低下 (敗血症性ショック) や肝臓、腎臓などの複数の臓器が機能不全 (多臓器不全) となり、治療に反応せずに亡くなってしまう劇症型の感染を発症しますので、注意が必要になります。
糖尿病のある方は重症化しやすい
糖尿病のある方で血糖値が高いと、免疫に関わる白血球や細胞の働きが悪くなるため、免疫の機能が低下します。
よって糖尿病のある方は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症リスクが高く、重症化しやすいため特に注意が必要です。
また糖尿病の合併症である神経障害によって皮膚表面の感覚低下があると、傷ができても気がつかない場合があり、感染症が知らぬ間に進行してしまう場合があります。
擦り傷や刺し傷を認めた場合は、よく洗浄をして、軽症でも注意深く経過観察をしましょう。
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 が疑われる症状
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 は、突発的に発症して、短時間で急激に進行するため、疑われる場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
疑われる所見として、以下のようなものが挙げられます。
① 腕や足に、急激に進行する皮膚の赤みや熱感・腫れを認める。
② 血圧の低下や息切れ、吐き気を認める。
③ 意識がはっきりしない、いつもと様子がおかしい。
この様な症状を認める場合は、日中であれば、内科や皮膚科、形成外科のいずれかを受診する、夜間や休日であれば救急外来を受診するなど、速やかに医療機関を受診しましょう。
治療と予防
治療は、抗生剤投与 (ペニシリン系やセフェム系など) が基本になりますが、感染した部位を切開して排膿するなどの外科的処置をする場合もあります。
重症化すると集中治療室での管理が必要になります。
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」 を予防する有効なワクチンは、現時点 (2024年) では、まだありません。
予防には、接触感染と飛沫感染それぞれの感染予防対策が重要です。
① 接触感染対策
こまめに手洗い、手指消毒をする。
ドアノブや手すり、スイッチなど高頻度に接触する部分をこまめに消毒する。
傷がある場合は、傷を清潔に保つ。その際は、使い捨ての手袋を使用する。
② 飛沫感染対策
十分な換気をする。
密集を避ける、2m以上の距離をあける。
マスクの着用を徹底する。
咳エチケットを実践する。
何より早期に適切な治療をすることが重要であり、気になる症状がありましたら、早めに医療機関に相談することをお勧めします。
以上、近年、増加傾向にある 「人食いバクテリア」 とは?、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。