日本人糖尿病患者さんの死因と平均死亡時年齢に関して
- 2024年6月13日
- 糖尿病
アンケート調査による糖尿病患者さんの死因と平均死亡時年齢に関する大規模調査が、10年ごと、過去4回にわたって実施されてきました。この記事では、5回目の調査にあたる2011年~2020年における調査結果 に関して解説します。
本日のポイント
- 糖尿病症例68555名,非糖尿病症例164621名を対象とした2011年~2020年における死因と平均死亡時年齢に関する大規模アンケート調査が実施された。
- 糖尿病患者さんにおける死因の第1位は悪性新生物 38.9% 、第2位は感染症 17.0%、第3位は血管障害 10.9%であった。
- 糖尿病患者さんは、非糖尿病患者さんと比較して、悪性新生物、感染症、虚血性心疾患、慢性腎不全および心不全の比率が高く、脳血管障害の比率は低い結果であった。
- 1971年~1980年の結果と比較すると、血管障害の比率は約1/4まで減少しており、特に虚血性心疾患の比率が顕著に低下していた。
- 糖尿病患者さんの平均死亡時年齢は、男性74.4歳、女性77.4歳で、日本人一般の平均寿命より短命であるが、その差は縮まっている。
糖尿病患者さんの死因~非糖尿病患者さんとの比較~
日本糖尿病学会「糖尿病の死因に関する委員会」は、糖尿病の治療および管理の進歩が、糖尿病患者さんの生命予後改善につながっているかどうか検証することを目的として、10年ごと、過去4回にわたって、糖尿病患者さんの死因に関する大規模調査を行ってきました。
今回、5回目にわたる2011~2020年におけるアンケート調査の結果が報告されましたので、ご紹介したいと思います (糖尿病67(2):106~128,2024)。
この調査では、最終的に全国208施設から糖尿病症例68555名,非糖尿病症例164621名が登録されました。
結果は以下になります。
【糖尿病患者さんの死因】
第1位 悪性新生物 38.9% (肺癌 7.8%、膵癌 6.5%、肝臓癌 4.1%)
第2位 感染症 17.0% (肺炎 11.4%)
第3位 血管障害 10.9% (脳血管障害 5.2%、虚血性心疾患 3.5%、慢性腎不全 2.3%)
第4位 虚血性心疾患以外の心疾患 9.0% (心不全 6.0%、不整脈 0.9%)
【非糖尿病患者さんの死因】
第1位 悪性新生物 35.4% (肺癌 7.0%、胃癌 3.9%、大腸癌 3.4%)
第2位 感染症 14.5% (肺炎10.8%)
第3位 血管障害 11.3% (脳血管障害7.3%,虚血性心疾患3.0%,慢性腎不全1.1%)
第4位 虚血性心疾患以外の心疾患 7.9% (心不全 4.4%、不整脈 0.8%)
糖尿病患者さんは、非糖尿病患者さんと比較して、悪性新生物、感染症、虚血性心疾患、慢性腎不全および心不全の比率が高く、脳血管障害の比率は低い結果でした。
死因の変化
1971年~1980年の10年間の同様な調査における死因の第1位は血管障害、第2位は悪性新生物、第3位は感染症でした。
今回の結果と比較すると、血管障害の比率は約1/4まで減少しており、特に虚血性心疾患の比率が顕著に低下していました。
この結果は、脂質管理や高血圧管理が広く浸透したことや、虚血性心疾患に対する検査や治療の進歩が影響していますが、この40年間の糖尿病治療の進歩も大きく貢献したと考えられます。
糖尿病患者さんの平均死亡時年齢~非糖尿病患者さんとの比較~
今回の調査における糖尿病患者さんの平均死亡時年齢は、男性74.4歳、女性77.4歳でした。
2020年の日本人一般の平均寿命は、男性81.6歳、女性87.7歳であり、それぞれ7.2歳,10.3歳短命でありました。
しかし、過去4回の調査における糖尿病症例と非糖尿病症例の平均死亡時年齢の差からみると、その差は縮まっており、糖尿病診療の進歩は、生命予後の改善にもつながっていると考えられます。
また、HbA1c値の記載があった糖尿病症例37,299名を、血糖コントロール良好群 (HbA1c<8.4%) と血糖コントロール不良群 (HbA1c≧8.4%) で分類し、平均死亡時年齢を比較すると、血糖コントロール不良群は良好群に比べて1.6歳低い結果でした。
この結果から、普段から血糖コントロールを良好に保つことは、生命予後に重要であることが分かります。
以上、日本人糖尿病患者さんの死因と平均死亡時年齢に関して、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。