高尿酸血症
高尿酸血症
これらの要因が重なると高尿酸血症のリスクが高まります。
高尿酸血症は、痛風発作を引き起こす原因として知られていますが、放置をしていると、将来的に尿路結石や腎機能障害を発症したり、動脈硬化が進行して、虚血性心疾患 (狭心症や心筋梗塞) や脳血管障害 (脳梗塞や脳出血) など生命に関わる重篤な病気のリスクも高まるので見逃せない病気です。
指摘をされたり、思い当たる症状がある方は早めに医師にご相談ください。
高尿酸血症とは、尿酸の血中濃度が高くなる状態を指し、尿酸値7.0 mg/dL以上で診断されます。
尿酸の原料は「プリン体」になります。
プリン体には、食事から体内に取り込まれるプリン体 (約2割) と、新陳代謝の過程で古い細胞が分解される時に体内で合成されるプリン体 (約8割) があり、いずれも肝臓で分解されますが、その際に生じる老廃物が 「尿酸」 になります。
そして尿酸は、4分の3が腎臓から尿中へ、4分の1が腸管から便へ捨てられ、体外に排泄されますが、尿酸には老化や発がんなどから体を守る抗酸化作用があり、生命維持には欠かせない物質であるため、誰の体にも一定量の尿酸が蓄積されています。
しかし体内の尿酸が増えすぎると、尿酸が結晶化して体内のあちこちに沈着していき、以下のような様々な合併症を引き起こします。
血液中に溶けきれなかった尿酸が、尿酸ナトリウムの結晶となり、足の親指などの関節の組織に沈着し、その結晶が剥がれる際に、白血球が異物とみなし攻撃することにより、炎症を起こす化学伝達物質が放出され、激しい痛みや腫れを引き起こします。
発作は、過食や飲酒、脱水、尿酸を下げる薬を開始した際など、尿酸値が変動したときに起こりやすく、24時間でピークになり、7~10日間で消失しますが、繰り返し痛みが起こる可能性もあります。
尿酸値が高くても、すぐに痛風発作が起こるわけではなく、5年ぐらい高い状態が継続すると起こりやすくなります。
痛風発作を起こすリスクは、尿酸値 7mg/dLで約1割、尿酸値 8mg/dLで約3割、尿酸値 9mg/dL以上で約6割と言われています。
腎臓に結晶が蓄積し、結石となって尿管に移動することで強い痛みや血尿を引き起こす疾患です。
結石が腎臓内に沈着し、腎臓の機能低下を招く可能性もあります。
進行して、腎臓の濾過機能などが低下すると腎不全となり、人工透析が必要となる場合もあります。
血管組織にも尿酸ナトリウム結晶が沈着することが言われており、動脈硬化が進行する可能性があり、虚血性心疾患 (狭心症や心筋梗塞) や脳血管障害 (脳梗塞や脳出血) など生命に関わる重篤な病気のリスクが高まります。
当院では、即日、高尿酸血症の検査が可能で、30分程度で結果が出ます。
高尿酸血症は生活習慣が大きく影響する病気であり、尿酸値が高くなる要因には以下のようなものが挙げられます。
アルコールを飲むと、肝臓での代謝が促進することでプリン体の分解が進み、血液中の乳酸濃度が高くなることで腎臓での尿酸排泄が低下することにより、尿酸値が上昇します。
尿酸値は、アルコールに含まれるプリン体によっても上昇しますが、アルコールそのものでも上昇するので、プリン体ゼロのビールに替えても、またビールを焼酎などに替えても、たくさん飲めば、尿酸値は上がります。
内臓脂肪の蓄積に伴って、尿酸値は上昇します。
動物性タンパク質を多く含む高エネルギー食は、肥満の原因となり、尿酸値を上昇させます。
また、レバーやカツオ、マイワシ、白子、あんこうなど、プリン体の多い食品のとりすぎも原因となります。
水分が不足すると尿量が減り、排泄する尿酸の量が減少するので、尿酸値が上昇します。
特に夏は尿酸が上昇しやすいので注意が必要です。
短時間で高い負荷をかける無酸素運動は、疲労物質である乳酸を増やすことで、尿酸値を急上昇させるリスクがあります。
有酸素運動は、尿酸値を下げるために有効と言われています。
女性ホルモンは尿酸の排泄を促進するために、男性のほうが高尿酸血症にかかりやすいと言われています。
高尿酸血症を発症しやすい遺伝的な体質があります。
ご家族で共通する生活習慣、食生活が影響する場合もあります。
高尿酸血症を治療する目的は、「合併症である痛風発作、尿路結石、腎機能障害を発症させないこと、生命にかかわる動脈硬化性疾患を予防すること」になります。
関節内に蓄積した尿酸ナトリウムの結晶をなくすためには、尿酸値6.0 mg/dL未満を5年間維持することが望ましいとされています。
そのためには尿酸値を可能な限り正常値に近づけ、良好な尿酸コントロールを維持することが重要になります。
高尿酸血症の治療は、なにより生活習慣を改善することと定期的な検査を受けることが大切です。
当院では、患者様一人ひとりの症状や状態に応じた治療を行っています。
主な治療方法は以下の通りです。
糖尿病や脂質異常症の食事療法と同様に必要なエネルギーや栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
肥満の改善のために、適正なエネルギー量の食事摂取を心がけましょう。
特に肉類など動物性脂肪に注意が必要です。
尿酸値を減らすためには、プリン体を多く含む食品(レバー、マイワシ、ふぐ、たら、あんこう、太刀魚、カルオ、大正エビ、マアジやサンマの干物など) の摂取を控えましょう。
砂糖、果糖はプリン体分解を促進させ尿酸値を上昇させるので、とりすぎには注意です。
高尿酸血症は酸性尿になりやすく、尿をアルカリ性にする食品を積極的に摂取すると、尿酸が排泄されやすくなります。
具体的には、ひじき、わかめ、昆布、大豆、ほうれん草、ゴボウ、サツマイモ、ニンジン、きのこ類などの摂取を積極的に増やしましょう。
アルコールの摂取は、適量を超えないように注意しましょう。
適量の目安は、ビールで500ml、日本酒で1合、焼酎25度で120ml、ワインで2杯 (180ml)、ウイスキーでダブル1杯 (60ml) になります。
週2日は飲酒しない日をつくりましょう。
腎臓からの尿酸排泄量を増やすためにも、水分を十分に摂取しましょう。
定期的に運動することは、カロリー消費で減量が期待できるだけでなく、尿酸値を減らすことにもつながります。
ウォーキングやスロージョギングなどの有酸素運動を、1日30分以上、毎日行うと効果的です。
激しい運動や筋力トレーニングなどの無酸素運動は、前述したように尿酸値上昇を誘発するリスクがあります。
特に、慢性腎臓病、眼底出血、不整脈、心筋梗塞、関節炎など合併症がある人は、運動に関して主治医の先生と相談してください。
運動能力や体力には個人差がありますので、自分のペースで続けられる運動を行うことが重要です。
その人にあった運動のペースは、運動中の心拍数を目安にするとよいです。
適正心拍数は以下の計算式で計算できます。
適正心拍数 (1分間)=138ー(年齢÷2)
例えば、60歳ならば138-(60÷2)=108になります。
生活習慣の改善を行っても目標値に至らない場合には、薬物療法が行われます。
糖尿病、慢性腎臓病、脳梗塞、末梢動脈疾患の合併例では動脈硬化症のリスクの観点からも早期の薬物療法を検討することが望ましいです。
尿酸の過剰生成を抑える薬 (尿酸生成抑制薬) や尿酸の排泄を促す薬 (尿酸排泄促進薬) を使用し、尿酸値のコントロールを図ります。
尿酸値を急激に下げると痛風発作が起こりやすいので、薬は少量から服用し、ゆっくり下げていきます。
痛風発作と診断された場合は、まずは発作の痛みを改善する治療を行います。
同時に腎機能障害などの合併症や生活習慣病などの検査を行うことが望ましいです。
痛みが改善してから、尿酸値 6mg/dL未満を目指した生活改善と薬物療法を行います。
再び痛風発作が起きないようにするには、尿酸値6mg/dL未満に到達したとしても、少なくとも5年以上は良好なコントロールを継続する必要があります。
薬物療法を行う場合には自己判断で服薬を中止するとかえって症状の悪化を引き起こす可能性があるため、医師の指示に従って継続してください。
薬物療法を開始しても、食事療法、運動療法は高尿酸血症の基本治療として継続していくことが大切です。
当院では、高尿酸血症、痛風に関するご相談を受け付けています。
高尿酸血症の診断・治療なら新宿区高田馬場駅、西早稲田駅近くの西早稲田ライフケアクリニックへご相談ください。
監修:西早稲田ライフケアクリニック 院長 井倉和紀