世界初!週1回投与のインスリン製剤が日本で製造販売承認を取得|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

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世界初!週1回投与のインスリン製剤が日本で製造販売承認を取得|西早稲田ライフケアクリニック|新宿区高田馬場の糖尿病内科・内科

世界初!週1回投与のインスリン製剤が日本で製造販売承認を取得

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この記事では、世界初の週1回投与の基礎インスリン製剤として、2024年6月24日に日本で製造販売承認された「インスリン イコデク (商品名:アウィクリ注)」に関して解説します。

本日のポイント

  • 2024年6月24日に、週1回の投与でよい基礎インスリン製剤 「インスリン イコデク (商品名:アウィクリ注) 」 が製造販売承認された
  • 従来のインスリン製剤よりも投与回数を減らすことができるため、患者さんの負担を大幅に軽減することが期待できる
  • 今まで基礎インスリンの注射を毎日投与していた方が 「イコデク」に変更する場合は、週1回にまとめて7倍の単位を目安に投与する
  • 懸念される問題として、低血糖を起こした場合、継続して経過観察をする必要がある

「インスリン イコデク (商品名:アウィクリ注)」 はどんなインスリン製剤?

1型糖尿病の方や、経口血糖降下薬を使用しても血糖コントロールが不良である糖尿病の方は、インスリン療法を検討する必要があります。

インスリン製剤は、超速効型、速効型、中間型、持効型、混合型といった様々な種類があり、効果発現時間と作用時間の違いから、分類することができます。

そのなかで持効型は、インスリンの分泌のなかで1日中ほぼ一定量が分泌される「基礎分泌」を補うためのインスリン製剤であり、通常は1日1回もしくは2回の皮下注射が必要になります。

2024年6月24日に製造販売承認された「インスリン イコデク (商品名:アウィクリ注 製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」は、持効型の作用時間を、さらに伸ばすことによって週1回の投与を可能にした製剤になります。

薬の半減期は約1週間と長く、約7日間にわたる血糖降下作用が期待できます。

従来のインスリン製剤よりも投与回数を減らすことができるため、患者さんの負担を大幅に軽減することができます。

「アウィクリ注」の適応となる方と具体的な使用方法

「アウィクリ注」の保険適用の対象となる患者さんは、インスリン療法が適応となる糖尿病のある方になります。

特に、現在インスリン療法を行っている方で注射回数を減らしたい方や、仕事などで毎日同じ時間に投与できない方などは、良い適応になるかと思います。

また自分で注射することができなくて、インスリン導入できなかった方でも、週1回であればご家族に協力してもらったり、医療従事者で対応できれば、定期的に投与することが可能となり、血糖コントロールが困難であったケースも改善する可能性がでてきます。

「アウィクリ®注」の具体的な使用方法は、通常、成人では1週間に1回皮下注射で投与し、初期投与量は30~140単位で、維持量は30~560単位となっています。

つまり、今まで基礎インスリン (持効型や中間型) の注射を毎日投与していた方が「アウィクリ®注」に変更する場合は、週1回にまとめて7倍の単位を目安に投与することになります。

ただし、血糖コントロールの状況や低血糖のリスクを考慮して、初回投与量や維持量をどうするかは慎重に主治医の先生との相談が必要かと思います。

なお週1回の注射液の量は、1日1回の持効型インスリンの1日投与量と同等だそうです。

 

「アウィクリ注」の有効性を検討した臨床試験データ

ここで、週1回インスリン製剤 「イコデク」 と1日1回インスリン製剤  「グラルギン」 の有効性を比較した臨床試験: ONWARD 1 試験の結果をご紹介します。

インスリン製剤を使用したことがない2型糖尿病患者さん984名を週1回の  「イコデク」 投与群 492名と1日1回のインスリン製剤  「グラルギン」 投与群492名に分け、投与52週後のHbA1c の変化量を比較しました。

結果は、

 「イコデク」 投与群:平均-1.55% (8.50% → 6.93%)

 「グラルギン」 投与群:平均-1.35% (8.44% → 7.12%)

と 「イコデク群」 の方が 「グラルギン群」 と比較して有意にHbA1c の変化量が大きかったです。

また投与48~52週時点での目標血糖範囲 (血糖値 70~180 mg/dl) に収まっていた時間も、 「イコデク群」  (71.9%) の方が 「グラルギン群」 (66.9%) と比較して有意に多い結果でした。

さらに「イコデク」 投与群に予期せぬ安全性の問題は認められませんでした。

(Rosenstock J et al. N Engl J Med 2023: 389: 297-308)

 

「アウィクリ注」の不安要素

この画期的なインスリン製剤は、糖尿病治療の新たな選択肢として期待されていますが、不安要素もあると思います。

懸念される問題として、低血糖を起こした場合、継続して経過観察をする必要があることです。

特に間違って週2回以上投与してしまった場合や、体調が悪くて普段通りの飲食ができないシックデイの場合は注意が必要です。

さらに「アウィクリ注」 から他のインスリン製剤へ変更する際も、「アウィクリ注」 の効果が持続している可能性もあり、一定期間は頻回の血糖測定をすることが望ましいと考えます。

以上より「アウィクリ注」 を開始する場合は、必ず週1回同一曜日に投与すること、他のインスリン製剤と間違えないようにすること、低血糖により注意することを徹底していただきたいです。

現時点 (2024年7月21日時点) では、まだ使用開始できる日は未定ですが、欠点をしっかりと理解したうえで、新たな治療薬の効果に期待したいです。

 

以上、世界初!週1回投与のインスリン製剤が日本で製造販売承認を取得、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。