糖尿病で歯科受診が必要な理由|HbA1cへの影響を糖尿病専門医が解説 | 西早稲田ライフケアクリニック

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糖尿病で歯科受診が必要な理由

糖尿病で歯科受診が必要な理由|HbA1cへの影響を糖尿病専門医が解説 | 西早稲田ライフケアクリニック

糖尿病で歯科受診が必要な理由

糖尿病で歯科受診が必要な理由

糖尿病の治療を続けている方に、当院では歯科の受診をおすすめすることがあります。

歯周病は、単に「歯ぐきの病気」として歯科だけで扱われるものと思われがちです。しかし、糖尿病の診療においては、血糖コントロールに影響する重要な併存疾患のひとつとして重視されています。

歯周病は「糖尿病の第6の合併症」と呼ばれることもあり、糖尿病と歯周病は一方だけが影響するのではなく、お互いを悪化させる関係にあることがわかっています。

食事や運動、お薬による治療を続けていてもHbA1cがなかなか改善しない場合、歯周病による慢性的な炎症が関係していることもあります。

HbA1cが下がらないとき医師が考えること

血糖コントロールが思うように改善しないとき、医師はいくつかの可能性を確認します。
まず、お薬の飲み忘れや飲み方に問題がないか、食事の内容や時間帯、間食や飲み物に変化がなかったか、運動が十分にできているかを確認します。
そのほかにも、睡眠不足、精神的なストレス、感染症、ほかの病気による体調の変化などが血糖値に影響することがあります。
さらに重要なのが、体のどこかで慢性的な炎症が続いていないかという視点です。炎症が続くと、血糖値を下げるインスリンの働きが妨げられることがあるためです。
こうした慢性的な炎症の代表的なもののひとつが、歯周病です。
糖尿病治療では、食事療法・運動療法・薬物療法の3つが基本となります。しかし、血糖コントロールに影響する要因はそれだけではありません。
HbA1cがなかなか改善しないときには、お口の中の状態にも目を向けながら治療の方向性を考えることが大切です。

当院の糖尿病診療については、「糖尿病」についてのページもあわせてご覧ください。

歯周病が血糖値に影響する仕組み

歯周病がある方では、血糖値が高くなりやすく、HbA1cも改善しにくい傾向があることが報告されています。
血糖値を下げる働きをするのは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンです。歯周病による炎症は、このインスリンの働きを妨げることがあります。
歯周病によって歯ぐきに炎症が起こると、体内では炎症性サイトカインと呼ばれる物質が産生されます。
歯周病の炎症が強い場合には、これらの物質が歯ぐきだけにとどまらず、血液を通じて全身に影響し、慢性的な炎症を引き起こすことがあります。
このような慢性的な炎症によって、インスリンの働きが低下することを「インスリン抵抗性」といいます。
インスリンが十分に働かなくなると、血液中の糖が筋肉や脂肪などの細胞に取り込まれにくくなり、血糖値の高い状態が続きやすくなります。
つまり、歯周病はお口の中だけの問題ではなく、全身の血糖コントロールにも関係する可能性がある病気なのです。

糖尿病があると歯周病が進みやすい理由

一方で、糖尿病のある方は歯周病になりやすく、進行しやすい傾向があることもわかっています。
糖尿病と歯周病は、一方通行ではなく、お互いに影響し合う関係にあります。

免疫機能が低下しやすい

血糖値が高い状態が続くと、細菌と戦う白血球の働きが低下することがあります。
歯周病は、歯周病原細菌への感染をきっかけとして起こる病気です。そのため、免疫機能が低下すると、歯ぐきの炎症が起こりやすくなり、歯周病も進行しやすくなります。

血流や傷の治りが悪くなりやすい

糖尿病では、細い血管が傷つきやすくなります。
糖尿病に伴う微小循環障害や傷の治りにくさも、歯周病の発症や進行に関係すると考えられています。
歯ぐきにも多くの細い血管が張りめぐらされているため、血流が悪くなると、炎症を抑えたり傷を修復したりする働きが十分に発揮されにくくなることがあります。

口の中が乾燥しやすい

血糖値が高いと尿量が増え、体内の水分が失われやすくなります。その結果、唾液の分泌が減り、口の中が乾燥しやすくなることがあります。
唾液には、口の中を洗い流し、細菌の増殖を抑える働きがあります。
唾液が減ると細菌が増えやすい環境となり、むし歯や歯周病のリスクが高くなる可能性があります。

歯周治療でHbA1cはどのくらい改善するか

歯周病を治療することによって、血糖コントロールが改善するかどうかについては、多くの研究が行われています。
糖尿病診療ガイドライン2024では、2型糖尿病のある方に対する歯周治療は、血糖コントロールの改善に有効であり、推奨されるとされています。
複数の研究をまとめた解析では、歯周治療後3~4か月で、HbA1cが平均約0.4%低下したことが報告されています。
ただし、効果の程度には個人差があります。
歯周治療によって歯ぐきの状態が改善しても、HbA1cには明らかな変化がみられなかったとする研究もあります。

歯周治療は、糖尿病治療に代わるものではありません。
食事療法・運動療法・薬物療法という基本的な糖尿病治療を続けたうえで、血糖コントロールを改善するための取り組みのひとつとして、歯周病の治療や予防を行うことが大切です。

歯科受診の目安

歯周病は、初期の段階では痛みなどの自覚症状がほとんどありません。
「歯ぐきに痛みがない」「特に困っていない」という理由で歯科を受診していない方も少なくありませんが、症状が現れたときには、すでに歯を支える骨が失われていることがあります。
糖尿病と診断された方は、まず一度、歯科で歯周病の有無や進行度を確認してもらうことをおすすめします。
歯周病の治療を受けた後は、再発を防ぐための定期的なメンテナンスが必要です。
糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病がない方の歯周治療後のメンテナンスは3~6か月間隔、糖尿病のある方では歯周炎が再発するリスクが高いため、原則として3か月以内の間隔が推奨されています。
ただし、適切な受診間隔は、歯周病の進行度、口腔内の状態、血糖コントロールの状況などによって異なります。具体的な受診頻度については、歯科医師の指示に従ってください。

この考え方は、糖尿病の眼科受診と似ています。
糖尿病網膜症も初期には自覚症状が出にくく、見えにくさなどの症状を感じたときには、すでに病気が進行していることがあります。そのため、症状の有無にかかわらず、眼科で定期的な検査を受けることが大切です。
詳しくは「糖尿病で眼科受診が必要な理由」をご覧ください。
歯科についても同じように、症状がない段階から定期的に確認していただくことをおすすめします。

このような症状がある方は歯科に相談しましょう

次のような症状がある場合には、歯周病が進行している可能性があります。

  • 歯みがきをすると歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが赤く腫れている
  • 口臭が気になる
  • 歯ぐきが下がって歯が長く見える
  • 歯がぐらつく
  • 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい
  • 口の中が乾燥しやすい
  • 朝起きたときに口の中がねばつく
  • 長期間、歯科検診を受けていない

ただし、歯周病は症状がないまま進行することもあります。自覚症状がなくても、定期的な歯科受診が大切です。

当院での取り組み

当院では、診察の際に、合併症予防の観点から必要と判断した場合には、歯科の受診をおすすめすることがあります。
また、歯科治療を安全に行うためには、直近のHbA1cや血糖コントロールの状態、服用中のお薬などの情報が必要になる場合があります。
歯科医院から糖尿病の治療状況や全身状態について情報提供を求められた場合には、当院から診療情報提供書を作成することも可能です。
口腔内の状態が気になる方、長期間歯科を受診していない方、どの歯科医院を受診すればよいかお悩みの方は、診察の際にご相談ください。

糖尿病と歯周病に関するよくあるご質問

どのくらいの頻度で歯科を受診すればよいですか?

糖尿病と診断された方は、まず歯科で歯周病の有無や進行度を確認してもらうことをおすすめします。

歯周治療後のメンテナンスについては、糖尿病のある方では歯周炎が再発するリスクが高いため、原則として3か月以内の間隔がひとつの目安とされています。
ただし、お口の状態や歯周病の進行度によって適切な受診間隔は異なりますので、歯科医師にご確認ください。

歯ぐきに症状がなくても歯科を受診したほうがよいのでしょうか?

歯周病は、初期には自覚症状がほとんど現れない病気です。

痛みや出血などの症状がなくても進行していることがあるため、症状がない段階から定期的に確認してもらうことが大切です。

歯周病を治療すると血糖値は改善しますか?

複数の研究をまとめた解析では、歯周治療後3~4か月で、HbA1cが平均約0.4%低下したことが報告されています。

ただし、効果の程度には個人差があり、すべての方でHbA1cが改善するとは限りません。
歯周病治療は糖尿病治療に代わるものではなく、食事療法・運動療法・薬物療法とあわせて取り組んでいただくものです。

血糖値が高いと歯科治療は受けられないのでしょうか?

血糖値が高いからといって、必ずしも歯科治療を受けられないわけではありません。

ただし、血糖コントロールが著しく不良な場合には、感染しやすい、傷が治りにくい、出血が止まりにくいなどのリスクが高くなる可能性があります。
そのため、処置の内容やタイミングについて、歯科医師と内科医が連携して判断することがあります。
まずは、糖尿病で治療中であることを歯科医師にお伝えください。

歯科では何を伝えればよいですか?

次の内容を歯科医師に伝えてください。

  • 糖尿病で治療中であること
  • 直近のHbA1cや血糖値
  • 服用中のお薬やインスリンの使用状況
  • 低血糖を起こしたことがあるか
  • 糖尿病以外の病気やアレルギー
  • お薬手帳の内容

血糖コントロールの状況や治療内容によっては、内科主治医からの情報提供書が必要になる場合があります。ご希望の際は、診察時にご相談ください。

糖尿病のある方は定期的な歯科受診を

糖尿病と歯周病は、お互いに影響を与える関係にあります。
歯周病による慢性的な炎症は、インスリンの働きを低下させ、血糖コントロールに影響することがあります。
一方で、高血糖が続くと免疫機能や血流、傷の治りが悪くなり、歯周病が進行しやすくなります。
糖尿病治療では、血糖値だけを見るのではなく、目、腎臓、神経、足、そして口腔内の状態も含めて、全身を定期的に確認することが大切です。
歯ぐきに症状がない方も、しばらく歯科を受診していない場合には、一度歯科で確認してもらいましょう。
当院では、糖尿病の治療と合併症予防の一環として、必要に応じて歯科医院と連携しながら診療を行っています。お口の状態や歯科受診について気になることがありましたら、診察時にお気軽にご相談ください。