HbA1cが急に上がった!食べすぎだけではない?考えられる原因と確認したいポイント
- 2026年8月11日
- 糖尿病
「食事はそれほど変えていないのに、HbA1cが急に上がった」そんな経験はありませんか?
HbA1cが上がると、まず「食べすぎたかな?」と考えがちですが、原因は食事だけではありません。
今回は、HbA1cが急に上がったときに考えたい原因と、確認しておきたいポイントを解説します。
本日のポイント
- HbA1cは過去1~2か月程度の血糖状態をより強く反映する指標。
- HbA1cが急に上がったからといって、必ずしも「食べすぎ」が原因とは限りません。
- 食事以外にも、運動量の低下、体重増加、感染症、睡眠不足やストレス、薬剤、糖尿病そのものの変化、糖尿病以外の病気など、さまざまな原因があります。
- 貧血などによってHbA1c自体が実際の血糖状態とずれてしまう場合もある。
- HbA1cが上がったときに大切なのは、まず「なぜ上がったのか」を確認すること。

そもそもHbA1cとは?
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、赤血球に含まれるヘモグロビンにブドウ糖が結びついた割合を示したものです。
血糖値が高い状態が続くほどHbA1cも高くなるため、糖尿病の状態を評価する重要な指標として使用されています。
血糖値が「採血したその時点」の状態を表すのに対し、HbA1cは過去1~2か月程度の血糖状態をより強く反映する指標です。
そのため、「昨日甘いものを食べたからHbA1cが上がった」というものではありません。
前回よりHbA1cが上昇していたら、直前の食事だけでなく、最近1~2か月程度の生活や体調に何か変化がなかったか振り返ることが大切です。
HbA1cが急に上がったときに考えたい8つの原因
① 食事内容が変わっていないか
まず確認するのは食生活です。
ただし、「ご飯や甘いものを食べすぎたか」だけではありません。
例えば、
・間食が増えた
・果物を食べる量が増えた
・甘い飲み物を飲むようになった
・外食が増えた
・夜遅く食べるようになった
・アルコールやおつまみが増えた
など、本人があまり意識していない変化が血糖値に影響することがあります。
季節や仕事、生活環境によって食生活が変わることもあります。
「食べる量は変わっていない」と感じていても、食事の内容や食べる時間が変化していなかったか確認してみましょう。
② 運動量・日常の活動量が減っていないか
運動すると筋肉でブドウ糖が利用されるため、血糖値が下がりやすくなります。
反対に、運動量が減ると血糖値が上昇することがあります。
例えば、
・暑くなって外出しなくなった
・寒くなって歩かなくなった
・在宅勤務が増えた
・腰や膝が痛くなった
・仕事が変わって歩かなくなった
などです。
「運動をやめた」というほど大きな変化がなくても、普段の歩数や日常生活での活動量が減っただけで血糖値に影響することがあります。
③ 体重が増えていないか
体重の変化も重要です。
特に内臓脂肪が増えると、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が強くなります。
その結果、以前と同じような食生活をしていても、血糖値が上がりやすくなることがあります。
数kg程度の体重増加でも影響する場合がありますので、HbA1cだけでなく最近の体重の推移も確認してみましょう。
④ 感染症や体調不良がなかったか
意外と重要なのが感染症です。
感染症や強い炎症が起こると、体内では血糖値を上昇させる方向に働くホルモンが増え、インスリンが効きにくくなることがあります。
例えば、
・風邪
・インフルエンザ
・新型コロナウイルス感染症
・肺炎
・尿路感染症
・皮膚感染症
・歯周病
などです。
糖尿病では、感染症によって血糖値が上昇し、さらに高血糖によって感染症が治りにくくなるという悪循環が起こることもあります。
「食事は変わっていないのに急に血糖値が悪化した」という場合には、最近、発熱や咳、排尿時の違和感、歯や歯ぐきのトラブルなどがなかったかも振り返ってみましょう。
⑤ 睡眠不足やストレスが続いていないか
睡眠やストレスも血糖値と無関係ではありません。
睡眠不足や強いストレスが続くと、ホルモンや自律神経などの影響によって血糖管理が悪化することがあります。
・睡眠時間が短くなった
・夜中に何度も目が覚める
・仕事や生活環境が変わった
・精神的な負担が増えた
・強いいびきがある
・日中に強い眠気がある
なども確認してみましょう。
強いいびきや日中の眠気がある場合には、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。
⑥ 薬が変わっていないか
薬の影響で血糖値が上昇することもあります。
代表的なのが**ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)**です。
ステロイドはさまざまな病気の治療に重要な薬ですが、血糖値を上昇させることがあります。
また、
・糖尿病薬を飲み忘れるようになった
・自己判断で薬を減らした
・薬を中止した
といったこともないか確認します。
糖尿病以外の病気で新しい薬が追加された場合にも、診察時にお薬手帳などで医師に伝えることが大切です。
⑦ 糖尿病そのものの状態が変化していることもあります
「生活は何も変えていないのにHbA1cが上がった」という場合には、糖尿病そのものの状態が変化している可能性も考えます。
2型糖尿病では、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」だけでなく、長い経過の中で膵臓からインスリンを分泌する力が低下してくることがあります。
そのため、同じ食事・同じ運動・同じ薬を続けていても、以前と同じ血糖値を維持できなくなることがあります。
「生活習慣が悪かった」と決めつけるのではなく、現在の糖尿病の状態を評価し、必要に応じて治療内容を見直すことが重要です。
⑧ 糖尿病以外の病気が隠れていることもあります
頻度としては高くありませんが、血糖値の急激な悪化をきっかけに、糖尿病以外の病気が見つかることがあります。
感染症のほか、ホルモンに関係する内分泌疾患などによって血糖値が上昇することがあります。
そして、注意しておきたいものの一つが**悪性腫瘍(がん)**です。
特に膵臓はインスリンを作る重要な臓器であるため、膵臓の病気によって、それまで安定していた血糖値が悪化したり、新たに糖尿病を発症したりすることがあります。
ただし、ここで大切なのは、「HbA1cが上がった=がん」ということではありません。
HbA1cが上昇する原因としては、食事、体重、運動量、感染症、薬剤など、より一般的な原因をまず考えます。
一方で、
・食生活が変わっていないのに急激に血糖値が悪化した
・原因不明の体重減少がある
・食欲が低下している
・腹痛や背中の痛みが続く
・皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
などを伴う場合には、血糖値だけを見るのではなく、背景に別の病気がないか確認することも大切です。
「HbA1cが上がった=血糖値が上がった」とは限りません
ここも大切なポイントです。
HbA1cは血糖値だけではなく、赤血球の状態にも影響される検査だからです。
例えば、鉄欠乏性貧血では、実際の血糖状態よりHbA1cが高めに出ることがあります。
反対に、
・溶血
・出血
・赤血球の寿命が短くなる状態
などでは、HbA1cが実際より低めに出ることがあります。
また、高度な腎機能低下や貧血、輸血などがある場合にも、HbA1cの解釈には注意が必要です。
つまり、「普段の血糖値はそれほど高くないのにHbA1cだけ高い」という場合には、HbA1cだけで判断せず、その理由を確認することが大切です。
HbA1cが急に上がったら、まずここをチェック
検査結果を見て慌てる前に、最近1~2か月程度を振り返ってみましょう。
□ 食事や間食が変わっていないか
□ 甘い飲み物やアルコールが増えていないか
□ 体重が増えていないか
□ 歩く量や運動量が減っていないか
□ 発熱や感染症などの体調不良がなかったか
□ 睡眠不足が続いていないか
□ 新しく始めた薬はないか
□ 糖尿病薬の飲み忘れはないか
□ 逆に、理由なく体重が減っていないか
原因は一つとは限りません。
例えば、「忙しくなって運動量が減った」「睡眠時間も短くなった」「外食も増えた」など、複数の要因が重なってHbA1cが上昇していることもあります。
原因が分からないときは、どんな検査をする?
HbA1cが急に悪化したときには、単にHbA1cを再検するだけではなく、状況に応じて原因を確認します。
例えば、
・血糖値
・血算(貧血の確認)
・腎機能
・肝機能
・尿検査
・感染症や炎症の評価
などを行います。
糖尿病そのものの状態を詳しく確認する必要があれば、インスリン分泌能などを評価することもあります。
また、「いつ血糖値が上がっているのか」が分からない場合には、持続グルコース測定(CGM)などを利用することで、
・食後に上がっているのか
・夜間に上がっているのか
・1日の中でどの程度変動しているのか
を詳しく確認できる場合があります。
体重減少や腹痛など、別の病気を疑う症状がある場合には、必要に応じて画像検査や専門医療機関への紹介を検討します。
HbA1cが上がったとき、すぐに食事を極端に減らさないで
HbA1cが上がると、「もっと食事を減らさないと」と考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、原因が感染症や薬剤、糖尿病そのものの変化、貧血などであれば、食事を極端に減らしても問題は解決しません。
むしろ、高齢の方などでは過度な食事制限によって、筋肉量や栄養状態が低下してしまうこともあります。
大切なのは、「なぜ今回HbA1cが上がったのか?」を考えることです。
原因が分かれば、食事を見直すのか、運動量を戻すのか、薬を調整するのか、それとも別の病気を調べるのか、次にするべきことが見えてきます。
こんな場合は一度ご相談ください
次のような場合には、自己判断だけで様子を見ず、一度医療機関へ相談することをおすすめします。
・HbA1cが短期間で大きく上昇した
・食事や運動を変えていないのに悪化した
・血糖値とHbA1cの数値が合わない
・高血糖が続いている
・急に体重が減ってきた
・強い口渇や多尿がある
・食欲低下や体調不良を伴っている
特に、著しい高血糖に加えて、強い口渇、多尿、吐き気・嘔吐、強い倦怠感、意識状態の変化などがある場合には、早めの医療機関受診が必要です。
当院でできること
当院では、HbA1cの数字だけを見るのではなく、
・血糖値・HbA1cの評価
・食事・運動・体重変化の確認
・糖尿病治療薬の見直し
・貧血・腎機能・肝機能などの血液検査
・尿検査
・必要に応じた血糖変動の評価
などを行い、「なぜ血糖値が悪化したのか」を一緒に考えていきます。
症状や経過から糖尿病以外の病気が疑われ、さらに詳しい検査が必要な場合には、適切な専門医療機関へご紹介します。

食事や生活を大きく変えていないのにHbA1cが急に上昇した場合や、原因不明の体重減少、食欲低下、体調不良などを伴う場合には、自己判断せず一度ご相談ください。
以上、HbA1cが急に上がった!食べすぎだけではない?考えられる原因と確認したいポイント、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。



