体重が減らなくなった!「停滞期」はなぜ起こる?原因と対策を解説
「最初は順調に体重が減っていたのに、最近まったく減らなくなった」
「食事にも気をつけているのに、体重計の数字が動かない」
「肥満症の薬が効かなくなったのでは?」
肥満症治療を続けていると、このような「体重が減らない時期」を経験することがあります。
しかし、体重が一時的に減らなくなったからといって、治療が失敗したとは限りません。
今回は、肥満症治療中に体重が減らなくなる理由、減量する速度の目安、停滞したときに確認したいポイントについて解説します。
本日のポイント
- 体重は、水分量、塩分摂取量、食事、便通、月経周期などによって日々変動するので、数週間~数か月の体重の変化を見る。
- 体重が減ると必要なエネルギーも減るので、同じ生活を続けていても、以前ほど体重が減らなくなる」ことがある。
- 減量が進むと、体がエネルギー消費を抑える方向に適応する(代謝適応)ことがある。
- 体重減少の一般的な目安は、週0.5~1%程度の体重減少。
- 「もっと食べる量を減らそう」と考える前に、なぜ体重が動かなくなったのかを整理することが重要。
- 単純に「食べない」ことではなく、必要な栄養を確保しながら、食事内容や摂取量を調整することが大切。

肥満症治療の「停滞期」とは?
減量を始めると、最初は比較的順調に体重が減っていても、しばらくすると減少速度がゆっくりになったり、ほとんど変化しなくなったりすることがあります。
一般に「停滞期」と呼ばれていますが、「〇週間体重が減らなければ停滞期」という明確な医学的定義があるわけではありません。
体重は、水分量、塩分摂取量、食事、便通、月経周期などによって日々変動します。
そのため、数日~1週間体重が変わらないだけで「停滞した」と判断する必要はありません。
1日ごとの数字ではなく、数週間~数か月の体重の変化を見ることが大切です。
なぜ体重が減らなくなるの?
① 体重が減ると必要なエネルギーも減る
体が大きいほど、日常生活で消費するエネルギーも多くなります。
例えば、体重90kgだった人が80kgになれば、以前より小さな体を維持することになるため、必要なエネルギー量も少なくなります。
つまり、「減量開始時と同じ生活を続けていても、以前ほど体重が減らなくなる」ことがあります。
これは必ずしも治療がうまくいっていないという意味ではありません。
② 体が減量に適応する「代謝適応」
減量が進むと、体重が軽くなった影響だけではなく、体がエネルギー消費を抑える方向に適応することがあります。
これを代謝適応(adaptive thermogenesis)と呼びます。
人間の体には、体重が減少するとそれに抵抗するような仕組みがあります。
そのため、減量が進むにつれて、最初と同じペースで体重を落とし続けることが難しくなるのは珍しいことではありません。
③ 知らないうちに食事量が戻っている
治療開始直後は食事への意識が高くても、数か月すると少しずつ元の食生活に近づくことがあります。
特に見落としやすいのが、
・間食
・甘い飲み物
・アルコール
・ドレッシングや調味料
・外食
・「一口だけ」のつまみ食い
などです。
一つ一つは少量でも、積み重なると摂取エネルギーは増えていきます。
これは単に「意思が弱い」という問題ではありません。
減量すると食欲を調節する体の仕組みも変化するため、食欲が戻りやすくなること自体が肥満症治療の難しさの一つです。
④ 日常生活の活動量が減っている
運動を続けていても、それ以外の時間に動く量が少なくなっていることがあります。
歩く、立つ、家事をする、階段を使うなど、運動以外の日常的な身体活動によるエネルギー消費をNEAT(非運動性活動熱産生)といいます。
減量中には、このNEATが無意識に減少する場合があります。
「週に何回運動しているか」だけでなく、1日全体でどのくらい動いているかを見ることも重要です。
⑤ 筋肉量が減っている
減量で減るのは体脂肪だけとは限りません。
食事量を極端に減らしたり、たんぱく質摂取が不足したり、運動量が少なかったりすると、筋肉量も一緒に減少することがあります。
そのため肥満症治療では、「何kg減ったか」だけではなく、「何が減ったのか」を見ることが重要です。
体重があまり変わっていなくても、体脂肪率や腹囲が減少し、筋肉量が維持されていれば、治療が順調に進んでいる場合もあります。
⑥ 便秘や水分量の影響
体重計が測っているのは脂肪だけではありません。
・塩分の多い食事
・便秘
・月経周期
・飲酒
・水分バランス
などによって、短期間で体重が増減することがあります。
数日体重が増えたからといって、「脂肪が一気に増えた」とは限りません。
できるだけ同じ条件で体重を測定し、長期的な傾向を見るようにしましょう。
体重はどのくらいの速さで減らすのがいい?
肥満症治療では、「早く痩せれば痩せるほどよい」というわけではありません。
急速な減量では、体脂肪だけでなく筋肉量も減少したり、必要な栄養素が不足したりする可能性があります。
一方で、肥満の程度や治療内容によっては比較的大きな体重減少がみられることもあります。
そのため、単純に「1か月○kg」と考えるのではなく、現在の体重に対してどの程度減っているかを見ることも一つの方法です。
一般的な目安は「週0.5~1%程度の体重減少」です。
例えば、
| 現在の体重 | 週0.5% | 週1% |
|---|---|---|
| 60kg | 約0.3kg | 約0.6kg |
| 80kg | 約0.4kg | 約0.8kg |
| 100kg | 約0.5kg | 約1.0kg |
体重80kgであれば、1週間に約0.4~0.8kg程度が一つの目安になります。
ただし、すべての人が必ずこの範囲で減量しなければならないわけではありません。
年齢、肥満の程度、基礎疾患、食事量、身体活動量、使用している薬などによって適切なペースは異なります。
最初は速く減って、その後ゆっくりになることも
減量を始めた直後には、食事量や炭水化物、塩分摂取量などの変化によって、体内の水分量も変化します。
そのため、「最初の1~2週間はかなり減ったのに、その後はあまり減らなくなった」ということは珍しくありません。
最初に減った体重のすべてが体脂肪というわけではありません。
減量速度が途中から緩やかになったからといって、それだけで「停滞期」と判断する必要はありません。
ウゴービ・ゼップバウンドでも停滞する?
ウゴービやゼップバウンドなどの肥満症治療薬を使用していても、体重は永遠に同じペースで減り続けるわけではありません。
治療開始後に体重が減少し、その後、時間の経過とともに減量速度が緩やかになり、一定のところでプラトーに近づくことがあります。
したがって、「体重が止まった=薬が効かなくなった」とは限りません。
また、「もっと早く痩せたいから薬を早く増量する」という考え方も適切ではありません。
肥満症治療薬は、体重減少だけでなく、吐き気、便秘、食欲低下などの副作用や食事摂取量、栄養状態などを確認しながら調整する必要があります。
特に体重が急速に減っている場合には、
・食事量が極端に少なくなっていないか
・たんぱく質が不足していないか
・筋肉量が大きく減っていないか
・強い疲労や体調不良がないか
などを確認することが大切です。
体重が止まったときに確認したい7つのポイント
| 確認すること | チェックするポイント |
|---|---|
| ① 期間 | 数日ではなく、数週間単位で本当に止まっているか |
| ② 食事 | 間食・飲み物・アルコール・外食が増えていないか |
| ③ 活動量 | 歩数や日常生活で動く時間が減っていないか |
| ④ 筋肉量 | 体重と一緒に筋肉が大きく減っていないか |
| ⑤ 体脂肪・腹囲 | 体重が同じでも改善していないか |
| ⑥ 便通・水分 | 便秘、塩分、月経などの影響はないか |
| ⑦ 治療内容 | 薬の使用方法や現在の治療が適切か |
「もっと食べる量を減らそう」と考える前に、なぜ体重が動かなくなったのかを整理することが重要です。
停滞したら、さらに食事を減らした方が良い?
必ずしもそうではありません。
体重が減らないからといって極端に食事量を減らすと、
・たんぱく質不足
・筋肉量の減少
・栄養不足
・疲労
・活動量の低下
につながる可能性があります。
大切なのは、単純に「食べない」ことではなく、必要な栄養を確保しながら、食事内容や摂取量を調整することです。
特に、必要なたんぱく質を確保しながら、体調に合わせて筋力トレーニングなどを取り入れることは、減量中の筋肉量を維持するために重要です。
「何kg減ったか」だけでなく「何が減ったか」
例えば同じ10kgの減量でも、体脂肪を中心に減った場合と、筋肉を大きく失いながら減った場合
では意味が異なります。
肥満症治療では、体重だけでなく、
・体脂肪率
・体脂肪量
・筋肉量
・腹囲
などを確認することで、より詳しく治療経過を評価できます。
また、肥満症治療の目的は、単に体重計の数字を小さくすることではありません。
・血圧が改善した
・血糖値が改善した
・脂質が改善した
・脂肪肝が改善した
・睡眠時無呼吸が改善した
・膝や腰への負担が軽くなった
といった変化も重要な治療効果です。
体重が一時的に止まっていても、体の中では改善が続いていることがあります。
停滞期こそ栄養指導を活用しましょう
治療開始時には食事を大きく変えられても、治療が長くなるにつれて、「これ以上、何を変えればいいのか分からない」という状態になることがあります。
そのようなときには、食事内容を記録し、管理栄養士と一緒に見直すことも有効です。
・たんぱく質が不足していないか
・炭水化物・脂質のバランス
・間食や飲み物
・食事をとる時間
・外食時の選び方
・無理なく継続できる内容か
などを確認します。
単に食事量を減らすのではなく、筋肉を維持しながら余分な体脂肪を減らすための食事を考えていくことが重要です。
こんなときは主治医に相談しましょう
次のような場合には、自己判断で食事を極端に減らしたり、薬の量を変更したりせず、主治医に相談しましょう。
・数週間~数か月、体重がほとんど変わらない
・食欲が明らかに戻ってきた
・体重とともに筋肉量が大きく減っている
・短期間に体重が大きく減っている
・食事がほとんど取れない
・強い疲労感や体調不良がある
・肥満症治療薬の副作用が続いている
・薬を使用しているのに体重が増えてきた
・どう食事を調整すればよいか分からない
肥満症治療薬を使用している場合も、自己判断で増量・減量・中止しないことが大切です。

肥満症治療では、最初から最後まで同じペースで体重が減り続けるわけではありません。
減量が進むと、
体重減少 → 必要なエネルギー量の低下 → 代謝や食欲の変化 → 体重減少が緩やかになる
という変化が起こります。
そのため、「体重が止まった=治療失敗」「薬が効かなくなった」とすぐに判断する必要はありません。
また、減量は早ければ早いほどよいわけでもありません。
大切なのは、体重だけを見るのではなく、体脂肪・筋肉量・腹囲・食事・活動量・肥満に関連する健康障害の改善を総合的に評価することです。
肥満症治療の目標は、単に体重を減らすことではありません。
筋肉をできるだけ維持しながら余分な体脂肪を減らし、健康状態を改善し、その状態を長く維持することが重要です。
体重が停滞して「次に何をすればいいのか分からない」と感じたら、一人で食事量をさらに減らすのではなく、医師や管理栄養士と一緒に治療内容を見直してみましょう。
以上、体重が減らなくなった!「停滞期」はなぜ起こる?原因と対策を解説、という話題でした。
この記事が、皆様の生活 (ライフ) のお役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。



